自分の住宅を手にした人の多くは住宅ローンを組んでいて、年末の住宅ローン残高をもとに計算され、支払った一部が返ってくるのが住宅ローン控除になります 。
最近の住宅ローンの貸付利率は過去最低の数値ですが、その結果、住宅ローン控除の利率よりも住宅ローンの貸付利率が低くなる現象が出てきていました。
住宅ローン控除>住宅ローン利率
この逆転現象を会計検査院が問題だと言い、令和4年に住宅ローン控除率と住宅ローン利率の逆転問題は解消される見込みです。
では、なぜ住宅ローン控除率と住宅ローン利率の逆転が問題なのでしょうか。一緒に考えていきましょう。
住宅ローン控除率と住宅ローン利率の逆転で何が問題となったのか?
住宅ローンの借入金利が1%を下回ると、住宅ローンの借入金利が低くなればなるほどその差額が大きくなります。
会計検査院の調査によると次の問題点が浮上していました。
①住宅ローン控除は住宅の購入促進のため昭和61年に創設されたけど、当時の旧住宅金融公庫の融資基準金利は5.25%で控除率1%であったこと
②平成29年に住宅ローン控除特例適用開始者のうち住宅ローンの借入金利が1%未満の人が全体の78.1%を占めていた
③住宅ローン控除率が1%を切ると「住宅ローン控除を受けるために住宅ローンを組む必要がない人まで住宅ローンを組む人が出ている」「住宅ローン控除の適用期間が終了するまで住宅ローンの繰上げ返済をしない動機付けとなっている」ような問題点が発生している
https://www.jbaudit.go.jp/report/new/characteristic30/fy30_kanshin_ch04_p1.html (会計検査院ホームページより)
大きくこの3点を問題として住宅ローン控除率と住宅ローン貸付利率の逆転現象を改善するように主張していたのです。
確かに住宅購入促進のために導入された制度なのに、控除率より貸付利率が下回ると控除した金額が返ってくる上に、結果として税金まで出している税金の二重の配付となってしまい税金の公平性に問題が生じてしまいます。
ただ、私もはじめは
と疑問に思いました。実際に仮装の数値でシュミレーションをしてみたら、私の考えは間違えていることがすぐに明らかとなったのです。
仮装の数値で住宅ローン控除と貸付利率との逆転現象をシュミレーションしてみた
ではシュミレーションをしていきます。わかりやすいように
とします。
返済1年目で借入利息1.5%、1.0%、0.3%の3通りでシュミレーションした結果は次のとおりとなりました。
当初1年利率 | 年末残高 | 支払利息 | ローン控除 |
0.3% | 2,432万1,537円 | 7万3,912円 | 24万3,215円 |
1.0% | 2,441万1,126円 | 27万1,542円 | 24万4,111円 |
1.5% | 2,445万2,694円 | 37万0620円 | 24万4,526円 |
住宅ローン借入金利を0.3%にしたのは、2021年12月時点でauじぶん銀行で適用されている変動金利0.3%を参考としています。
シュミレーションしてわかることですが、
控除利率<借入利率、となれば、控除額>支払利息
と逆転現象が起きてしまうんですね。
いつから逆転現象が起こらないようになるのか?
2021年12月に閣議決定された令和4年度の税制大綱に住宅ローン控除の改正について記載されていることから、2022年度から改正になる見込みです。ではどのように逆転現象が起こらないような改正内容となるのでしょうか?
内容 | 新 | 旧 |
期限 | 2025年まで | 2021年まで |
控除率 | 0.7% | 1.0% |
所得上限 | 2,000万円 | 3,000万円 |
適用年 | 借入限度額 | 適用利率 | 適用年数 |
2022年、2023年 | 3,000万円 | 0.7% | 13年 |
2024年、2025年 | 2,000万円 | 0.7% | 10年 |
控除率は1.0%から0.7%へ削減されていますが、0.7%を切る住宅ローン貸付利率の商品はまだあります。
また、住宅ローンの借入限度額が2024年から2000万円までと減少する点は注意が必要です。(2000万円をこえる住宅ローンの部分については住宅ローン控除が適用されません。)
完全な逆転現象を解消するまでにはなりませんが、逆転現象の縮減はできるようです。税の公平性からいうと控除率を下回る住宅ローン貸付利率の契約者は住宅ローン控除の恩恵を受けないような制度も必要なのではないかと思います。
どちらにしても住宅ローンを契約するときは「借りられる金額を借りる」のではなく「無理なく返済できる金額を借りる」という基本をこれからも伝えていきたいと思います。
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